Solana Lab、Solana Mobileを設立し、Web3特化したスマートフォン「Saga」を発表
昨日6月24日未明、SolanaからWeb3特化のスマートフォンの発表がありました。なぜこのタイミングでWeb3に特化したスマートフォンを出す必要性があるのかについて考えてみたいと思います。
Web3特化のスマートフォンが必要な背景
現状モバイルに最適化されたWeb3UX設計ができていない
WEB2.0プラットフォームによる検閲&手数料回避
アプリケーションレイヤーでのウォレットセキュリティの管理リスク
① 現状モバイルに最適化されたWeb3UX設計ができていない
現状、ほとんどのWeb3サービスはモバイルではなく、PCブラウザに特化したユーザー体験の設計になっています。PCブラウザに拡張機能 / アドオンとしてブロックチェーンウォレットを実装しており、サイトアクセスした際にウォレットを呼び出す処理をしています。
そのため拡張機能の実装ができないモバイルブラウザ環境でのWeb3は著しくUXを損ねてしまっています。
そのため現状モバイル環境でWeb3サービスにアクセスするには、SafariやChromeなどのモバイルブラウザを利用する形式ではなく、各ウォレットが提供しているアプリケーションのアプリ内ブラウザを通すことでアクセスします。
OS等の非アプリケーションレイヤーで秘密鍵管理の仕組みがないことによって、アプリケーション側で秘密鍵を管理する他なく、そのアプリケーションに限定された形でしかウォレットの振る舞いができないというところがモバイルにおけるWeb3体験を損ねています。
具体的にUXを損ねている点は以下です。
SafariやChrome等のスマートフォン標準ブラウジングでWeb3サービスにログインできない
各アプリケーションでウォレットログインするには、サービス別にシークレットリカバリーフレーズもしくは秘密鍵のインポートが必要
アプリケーションレイヤーでシークレットリカバリーフレーズや秘密鍵を管理するため、開発会社のセキュリティレベルに依存した保管になる(後述)
②WEB2.0プラットフォームによる検閲&手数料回避
AppStoreやGoogle Playではアプリの品質担保のために、ガイドラインを設けたアプリ審査を行っています。このアプリ審査に通過しないと開発者は一般ユーザーにアプリを提供することができません。
これらのガイドラインに準拠した審査は、ユーザー保護や健全なマーケットプレイス運営を行うために以下のような観点で行われます。
プラットフォーム指定のセキュリティーが担保されているか
子供に不適切なコンテンツや広告が表示されるようになっていないか
他社のコンテンツの権利侵害をしていないか
UXを損なうような実装をされていないか
一見するとこれらは大事な取り組みに思える一方で、課題も抱えています。
ガイドラインといっても細部まで決めきれるものではなく、現場の審査担当レベルで意思決定にばらつきがある
プラットフォーマーが意図しない新しい実装方法は審査通過しないリスクが大きい
毎日膨大な数のアプリが審査提出されるため、プラットフォーマーの人的対応には限界があります。故に杓子定規な審査や審査担当の主観によってアプリ審査が通過しない事例が多くあります。
今でこそだいぶ環境整備されてきていますが、2015年前後のAppleの審査は非常に厳しい状況でした。アプリを提出してから審査まで1~2週間ほど時間がかかる仕様であり、1度リジェクト受けると再審査含めて公開まで半月以上待たされることになりました。資本力が少ないプレイヤーにとっては死活問題で、2~3回リジェクト受けるとアプリストアに公開することができず売上たたないまま1~2ヶ月待機させられることになります。
そして現在のWeb3は黎明期ということもあり、各ブロックチェーンの仕様が異なっていたりプラットフォーマーがトップダウンでガイドラインを制定するのが非常に難しい状況になっています。そういった状況もあり、WEB2.0プラットフォーマーが既存のアプリ市場を維持しながらWeb3アプリケーション ≒ dAppsに合わせていくまではかなり時間がかかるものと思われます。
そのためAppStore やGooglePlayに依存しない形でのモバイル環境のdAppsマーケットプレイスを作る必要性がでてきます。
またAppStoreやGooglePlayはマーケットプレイス維持のためのインフラや人的リソースを維持する理由もあり、各アプリベンダーに多額の手数料を強いています。AppleとEpicGamesの争いは記憶に新しいですが、こういった中央集権的な重税から逃れる意味でもWeb3における分散型のアプリマーケットが求められるかと思います。
③ アプリケーションレイヤーでのウォレットセキュリティの管理リスク
現状のモバイルWeb3アプリは、各アプリケーションでウォレットの秘密鍵やシークレットリカバリーフレーズの管理が必要になります。それ故に各アプリケーションはそれらのセキュリティ担保を自前で行う必要性があり、ユーザーはそれに対して本当に信用にしてよいか不安に思う一面もあります。
各アプリケーション毎に以下のようにウォレットのセキュリティアップデートの対応も必要となってきます。
開発者のセキュリティレベルがわからない中、アプリケーション毎に秘密鍵やシークレットリカバリーフレーズの管理を任せるのはかなりリスクあるものと考えます。このため非アプリケーションレイヤーで秘密鍵やシークレットリカバリーフレーズを管理し、アプリ毎にアクセス権限を付与していくモデルの方がセキュリティの担保がしやすいのではと考えます。
さらにユーザーの秘密鍵を盗むために、悪意があるWeb3アプリを配布している業者もいます。
こうしたScamアプリに秘密鍵やシークレットリカバリーフレーズを安易に入力させないためにも非アプリケーションレイヤーで制御し、基本的には細部に権限分けしたり、読み取り情報だけをアプリレイヤーに落とし込んでいく運用の方が望ましいのではないでしょうか。
Saga スマートフォンの特徴
これら3つの大きな課題に対して今回Solanaが発表するスマートフォンは有効な解決策を提供できるポテンシャルがあるのではと考えています。
以下Solanaスマートフォンの特徴の抜粋です。
Seed Vaul:安全な秘密鍵保管プロトコル
ウォレット、アプリ、Androidオペレーティングシステムから秘密鍵を分割したまま、トランザクションの即時署名を容易にする機能
Solana dApp Store
dApps向けのAndroid上の新しいアプリ配信システム
Android OSベース
あくまでベースはAndroidであることでWEB2.0までの技術基盤を活かした展開が可能(独自OSは地雷感あるのでAndroid準拠の方が安心感もありますw そのうちオープンソースでモバイルOS運営するDAOとかできそうですよね)
アプリ構築のためのSDK提供
モバイル環境に特化したウォレット管理の仕組みを取り入れることで、シームレスなユーザー体験を提供することができたり、セキュリティの担保につながっていきます。またdAppsに特化したマーケットプレイスが出てくることで、現状のWEB2.0準拠ではない新しいマーケットプレイス運用のスタンダードを確立できる可能性を秘めていると考えます。
デバイス / OSレイヤーでWeb3の実装が進んでいくことで、マスアダプションに向けたユーザー体験の準備が整っていきそうですね。
PS. 残念ながら日本での発売はまだ先みたいです😢
−−スマホに関して、日本展開の予定はありますか? スマホを日本で展開することも考えてはいますが、今のところ、まずアメリカからスタートして徐々に展開していく予定となっています。アメリカでの結果次第で、徐々に拡大していく予定です。
https://www.neweconomy.jp/posts/238025
今回もお読みいただきましてありがとうございました!
Enjoy Web3 Life!!!